契約書がない場合は
契約書が無い場合の解決法
契約書がないと、債権の回収はできないでしょうか。そんなことはありません。
契約の成立を証明する文書がないときは
電話注文の場合
電話一本で注文し、商品が送られてきます。これで売掛金債権、つまり商品代金債権が発生するのです。これは、従前から取引関係があり、信頼関係が基礎になっているから、できることなのです。お互いに相手方の信用状態がわかっているからなのです。
したがって、電話による注文、電話による承諾であっても、と自社の意思が合致したときに契約が成立し、売買の場合でいえば、売主は、商品代金債権を取得するのです。
商業帳簿がある場合
売掛金台帳、売掛帳などを商業帳簿といい、基本的に作成・保存が法律的に義務づけられており、立派に法律上の根拠を有します。
また、商業帳簿は、裁判所としても、証拠としての価値があることを前提として、時には訴訟の当事者に対して、提出を命令することもできる。
よって帳簿があれば、契約書がなくとも、債権回収は可能です。
メモの走り書きの場合
メモは法律文書として証拠価値は低いです。
署名捺印がない
契約書が、動かし難い証拠となり得るのは、当事者の署名、もしくは記名押印がある、という点です。
メモは、この点において、証拠としては弱いです。ただメモの中には、署名らしき名前を書いてあった場合、署名として認める事もあります。
内容がまとまっていない
ただ走り書きのメモは、契約の全体を表現していません。主要な一点を示すだけにすぎない場合がほとんどです。
以上のことから、メモは、他の文書の補助的な役割を果たしているだけということになります。
電話注文には、電話聴取書の作成
たとえ電話注文であっても、商品を発送して、それが買主に届いていれば、売買契約は有効に成立しています。もちろん、代金債権の回収は可能です。ただし、電話注文の欠点は、代金の支払方法、単価などにつき、文書による証拠が残らないという点です。
それをクリアするためには、
電話聴取書のような帳面に、電話の内容をはっきり記載しておく。
注文書の会社名、電話をかけてきた者の氏名、所属、注文の内容、商品名、数量、単価、納期、代金の支払方法、納入場所、そして電話のかかってきた日時、電話を受けた者の署名など
納品書を商品代金の請求に使う
商品売買契約は、契約の成立と、債務の履行との二つの場面があり、
- 契約書や注文書は、契約の成立の全部もしくは一部を証明する書面。
- 契約が成立した後、売買であれば、売主は商品を買主に引き渡す(契約の履行)。
納品書特徴と利用方法
- 商品の引渡しについての経過を示す書類。
- 買主の側は納品書によって、引渡を受けた商品の品名、数量、単価等を知ることができる。
- 商品を納入したことが、納品書などで証明できれば、債権の発生の証明は容易になる(ただし、買主側のサインが必要)。
- 契約書とちがって、納品書は債権の発生そのものを直接に証明するものではなく、あくまで、物や仕事の引渡を証明で契約を間接的に証明する一つの資料となるにすぎない。
- 納品書(ただし受領側の印鑑、サインのあるもの)によって、代金債権の回収は可能。ただし、買主側のサインのない納品書の場合は、証明力が非常に低い。
金の貸し借りで借用証がない場合
★ポイント★具体的・現実的な証言があれば勝訴への道が開ける
物の売買であれば、現実に物が移動しているので契約書などの証拠書類がなくとも、証明の方法はあります。ところが、金銭の貸借は、金銭消費貸借契約書や、借用証が存在しない場合は、証明のしようがありません。
金銭の証明は困難
- 金を受け取った事実を否定された場合、融資金を借主に渡した、という証明が困難。
- 金銭を渡した事実を貸主が主張立証しなければならない(要物契約)。
- 金を借りるまでの経過、貸す動機、返済約束の詳細、資金の出所、借主の使途などに至るまで、具体的に証言の中で再現することで、はじめて証明がつき、訴訟に勝って、回収が可能に。
契約書を紛失した場合
★ポイント★署名や記名押印まで写ったコピーなら強い証明力あり
当事者双方が署名もしくは記名押印した契約書を紛失したがその契約書のコピーのある場合、コピーにもとづいて、債権の回収が可能。ただし、署名や記名押印を性格に写しているコピーが存在しないときは、証明は困難。